スポーツから得た今にいきる価値

「1万時間の法則」ってご存じでしょうか?

ある分野で一流となるには1万時間の練習、勉強、努力が必要だというものです。

大学や社会人でスポーツに打ち込んだ人たち、体育会系出身と呼ばれる人たちは、ぜひ計算してみて下さい。練習以外にも、映像を見たり1人考えたりする時間も含まれるでしょう。1万時間クリアしている人もおおいのでは。

何かに1万時間取り組むなんて、普通なかなかできるものでは、ありません。

一方で、こうした経験を持つアスリート出身者の中には、競技を引退してからはこれといった目標も定まらず、夢中になれるものも見つからず、悶々と暮らしている人も少なくない。

スポーツに情熱を注いでいた頃の生活と比べると、なんだか張り合いのない生活で、現役と引退でキッパリキャリアが分かれている感じ。

貴重であり希少な経験を持ってきた元アスリート、元体育会系人材が、より自分らしい人生を作っていけるようにはどうしたらよいか。

考えてみるとその原因は、競技生活から得たもの・そこからわかった自分の特性関心が何なのかを明確に理解できてないからだと思うんです。

経験をその後のキャリアに繋げられていない。

スポーツを通じて得られたことでよく挙げられるのが「チームワークが得意」とか「コミュニケーション力がある」など。

もちろんこれはこれで良いのだけど、もっとその人なりに深掘りしたり広げたりできるはずなんです。

そうしたスポーツから得た自分なりの価値を理解しておくと、こんなことの役に立ちます。

・今いる組織が自分に合っているのかどうか判断するときの基準になる。

・今後のキャリアを考える際の指標になる。

・悩んだ時に立ち返る軸になる。

僕も改めて、いま仕事で活かされているラグビーから得た経験を振り返ってみました。

7つ紹介します。

自分が成長できる環境を理解している

僕は、自分のレベルより1,2段階ほど高い環境に身を置くと自分の成長につながることに気がつきました。

明治大、NTTコミュニケーションズでラグビーを経験して、これを実感しました。

周りのレベルについて行こうと必死になっているうちに、いつの間にかグンと実力が上がっている。

そこに大きなストレスはなくて、メンタルでやられそうになったことは一度もない。

ラグビー引退後にビジネススクールに通った時や、別の業界に転職してからも同じような経験をして、

「これはラグビーだけじゃないんだな」ということがわかりました。

熱中しているものがあるとき、自分がどんな環境にあると成長できるのか、ということを理解できたということです。

起業しようと思い切った決断を下せたのは、こうした理解があったからでもあります。

自分のリーダーとしての特徴を理解している

チームスポーツでの経験から、組織のリーダーの役回りを何度か経験しました。

中学ではキャプテン、高校では副キャプテン。

明治大学ラグビー部では、寮での生活規範を管理する「寮長」という役職。

※全部員90名ほどが同じ寮で暮らしていました。

NTTでは選手の傍ら、ラグビー部の社会活動を企画・実行する「CSRチーム」のリーダーを務めました。

これらの活動を通してわかったことは、僕は背中で引っ張っていくリーダーではない、ということ。

僕は天然キャラとよく言われてましたし、どちらかというといじられキャラです。

そんな僕が「背中で示すリーダー」をやろうとして、見事に失敗しました。統率と実行がなかなかうまく行かない。

要領もそんなによくないから、キャパオーバーになってしまう。

一方で、「賛同者を増やして手伝ってもらうリーダー」をやろうとするとうまく行きました。

これを理解できたことが、今の仕事のスタイルにも活かされています。

フォロワーとしての振る舞い方

自分がリーダーを務めた経験から、組織のリーダーをサポートする術も身につきました。

リーダーというのは、時に孤立しがち。

リーダーに声をかけて協力している姿勢を示すこと。

またリーダーの声ばかりでは組織は動きません。よっぽどの強いリーダーでない限り、マンネリ化します。

自分もリーダーの賛同者となって、「やろう!」「まとまろう!」と言って一緒にチームを巻き込み、意識を一つに前進していく。

そんな考え方を自然と学びました。

ラグビーの面白さを伝えるのが好き

NTTにいた頃、トップリーグのシーズンになると職場の人を集めて「ラグビー説明会」なるイベントを開催して、ラグビーの楽しみ方を解説する活動をしていました。

(今考えると、つまらないイベント名だなぁ…。)

体を張ったルール解説、海外の試合映像を使った演出、ニュージーランドやオーストラリアのビールの用意など、どうしたら参加者に楽しんでもらえるかを考えながら毎年開催していました。

この企画と運営がもう本当に楽しくて、ラグビーをプレーするのも楽しかったけど、啓蒙する側もいいもんだなと、これが仕事になったら最高だなと、当時はなんとなく考えていました。

この情熱が少しずつ大きくなり、転職してラグビーワールドカップの業務を自分の元に引き寄せる、大きな原動力となりました。

人から覚えてもらえる

社会人になってまでラグビーをやっていたというのは、どう考えても希少なキャリア。

僕は自己紹介の時は積極的に競技経験を喋るようにしていて、それによって相手にも覚えてもらいやすいし、会話のきっかけにもなります。

人から「柏原さんは実業団でもラグビーをしていたんですよ」と紹介された時も「いやいや、大したことないです〜」などと謙遜せず、「はい、そうなんです。いい経験ができました。」と堂々と受け応えるようにしています。

まだまだ知名度が無いラグビー業界、自分が謙遜しちゃうと、ほんとにすごくなかった選手みたいじゃないですか。

僕は全くもって有名選手ではありませんでしたが、明治大学・トップリーグでプレーした経験には誇りを持っているので、それをちゃんと意思表示して、自分の特性を認知してもらうようにしています。

アスリートの気持ちがわかる

スポーツ業界のSNS活用のサポート、アスリートのキャリア支援、という今の事業内容は、自分がアスリートであったという経験が十分に活かされています。

本気でラグビーに取り組んだ経験、地域や子供たちと交流した経験、負けて悔しくても応援してくれたファンには笑顔でお礼を伝えた経験、引退してから真剣にキャリアに悩んだ経験…

こうした様々なシーンでのアスリートの立場が、自らの経験からよくわかります。

この理解が、仕事をしていく上での企画や、現場での振る舞いにも活かされています。

キャリアについての思考が深まった

社会人でラグビーをやっていると、一般入社した同期の連中からは実務経験としてはどんどん置いていかれます。

差は開く一方。

その危機感が、自分の将来について真剣に考える原動力となり、社内政治という狭い世界から視野を広げ、労働市場における自分の価値を考えるようになりました。

危機的な状況は、人を真剣にさせます。


こうして、自分が競技から得た経験やスキル、自分の特性を「言語化」しておくことが大切です。

そうでないと、「自分はスポーツしかやってこなかったから…」という諦めベースでしか次の道を見つけることができません。

たとえば、チームメイトに外国人がいたことがきっかけに語学スキルを身につけ、同時に海外の文化や暮らし関心を持ち、海外青年協力隊として競技の普及に出向く、というキャリアもあるでしょう。

様々なメーカーのウェアを着用してその機能性を理解し、ファンが日常にとして着られるウェアの開発を目指してアパレルメーカーを目指すなど。

人生100年、働く期間もどんどん長くなる中、アスリートとして活動した期間は案外短いものです。

しかし、その活動は非常に貴重であり、希少性があります。

グローバル化・多様性・個の強さが重要視されるこれからの時代は、この希少性が大切であり、きちんとそれを自分で理解しておくことで、自分のオリジナルの人生を設計していくことが可能になっていきます。

これはスポーツに限らず、何かに熱中したことのある経験をお持ちの方であれば、共通で役に立つ思考法だと思っています。

みなさんがそこから得た価値はなんでしょう?

それではまた!

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