国際オリンピック委員会(IOC)のSNS業務を請け負った

2021年7月26日〜8月11日で開催された東京オリンピック。

今回縁があって、そのソーシャルメディアの業務に関わることができました。

今回扱ったのは、この2つのアカウントです。

【Twitter】オリンピック @gorin

【Instagram】オリンピック @gorin

きっかけ

きっかけとなったのは、Linkedinで届いた一本のダイレクトメッセージ。

Linkedinとは、世界最大級のビジネス特化型SNSです。

【参考】Linkedin 柏原元プロフィール

ここに、ロンドンの転職エージェント会社からDMが届きました。

2021年5月、大会開幕の2ヶ月前のことでした。

この夏東京で開催される、非常に有名な国際スポーツイベントのソーシャルメディアマネージャーを探しています。興味はありませんか?

といった内容でした。

これ絶対オリンピックじゃん!

そう思った私は

「これまでの経験を活かしてお力になれると思いますよ」と返信。

すぐに面接がセットされ、

いくつかの能力テストも行われ、無事仕事を請け負うこととなりました。

Linkedinのプロフィールはこまめに更新をしており、

ラグビーワールドカップを含めた業務経験をきちんと入力して公開していたことが、今回のチャンスのきっかけになったと思います。

IOCによるトレーニング

契約が決まってからは、開幕に向けて約1ヶ月に渡り、オンライントレーニングが10回ほど行われました。

IOCが中心となり、メンバーの紹介やルール・コンセプトの共有、各種ガイドラインの説明、戦略の説明などがありました。

世界中から60名ほどのメンバーが参加していました。

上の写真からも分かるように、すごくいい雰囲気でトレーニングが進んで行きました。

(僕は英語についていくのが必死で笑えておらず…)

連絡手段は主にSlack。

かなりカジュアルな「レッツゴー!」みたいなノリで、IOCも我々のやる気をうまく引き出して進行してくれました。

オリンピックのSNSで扱われた言語は9つ。

英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ヒンディー語、ロシア語、中国語、韓国語、そして日本語。

私含めて4人のメンバーが日本語を担当しました。

私以外の3名は、外資系企業経験があるコミュニケーションのプロ、スポーツビジネスのトップランナー、SNSマーケティングのスペシャリスト。

錚々たるメンバーが揃いました。

一緒に仕事をしていて頼もしかったなぁ。

オンラインでのトレーニングは全て英語で行われましたが、私の英語能力ではかなりキツかった…

日本人メンバーに後で教えてもらうなど、かなりサポートしてもらいました。

戦略

全体的な戦略の中でキーになったテーマは

#StrongerTogether(団結すれば強くなれる)

オリンピックアスリートの困難に負けない力、やり切る決意を称え、世界中の人たちに希望、団結する心、インスピレーションを与える。 

そういった軸がありました。

大阪なおみ、ウサイン・ボルトなどを起用したムービーでそれを表現しています。

やはりオリンピック開幕前は、世界中で、特に日本では大会に対する非難の声が強くありました。

メディアもネガティブな報道が多く、かなり煽ってましたね。

そうした中で、コロナ禍という厳しい状況の中で、オリンピックはどうあるべきなのか、どんなメッセージを発信していかなければならないのか。

「#StrongerTogether」にそれが凝縮されていました。

SNSの担当者含め、オリンピックでは長期的・短期的にも世界中の様々なバックグラウンドを持った人間が集まってプロジェクトを進行していきます。

ともすればバラバラになりがちな組織形態ですが、

「#StrongerTogether」という言葉。アスリートの努力の過程や姿勢、ドラマティックな瞬間を伝えていくんだという方向性が示されていたことによって、統一したコミュニケーションができていたと思います。

若い世代へのアプローチ

個人的にはマーケティングにおいて最も大切にしなければならないのは、今応援してくれる、今商品を買ってくれている既存のファン・顧客だと思っています。

しかし、活動を継続・拡大してくためには新しいファンにも目を向けていく必要があります。

IOCは、Gen Z(1990年代半ばから2000年代前半生まれの世代)のオリンピックへの関心を高めることを重要指針の一つとしていました。

Gen Zへのアプローチするためのメディアを位置付けられていたのが

TikTok、Instagram、YouTubeです。

@olympics

After three consecutive golds, who’s taking Bolt’s crown? ##OlympicSpirit ##Sprint ##UsainBolt

♬ original sound – Olympics

競技においても、東京オリンピックからスケートボードやサーフィン、BMXのような新競技が採用されたのも、こうした若い世代へのアプローチが考えられているものと思います。

次回ダンスからはブレイキン(ブレイクダンス)が加わりますね。

例えば日本の紅白歌合戦も若い世代の視聴者獲得に様々な手を打っていますが、

日々進化しようとし続けることの大切さを感じることができました。

ジェンダーの公平性

性に関わる表現についてもトレーニングを受けました。

性別における偏見やステレオタイプを無くそうというものです。

出産を経験したアスリートだからといって、競技結果よりも出産ストーリーに常にスポットライトが当たっているようではならない。

男子選手だからといって、男らしいといった表現は避けよう。

スポーツマンではなく、アスリート。

カメラマンではなく、カメラクルー。

女性を性的な目で撮影したような写真の利用は避ける。

そのようなことをまとめたガイドラインを元したトレーニングがありました。

同時に人権の尊重における表現もきちんとルール化されています。

名誉毀損、ハラスメント、LGBT、宗教に関する表現など。

その他、トラブルになりがちな著作権問題、ドラッグや酒、個人情報に関する扱いもドキュメント化されていました。

こうした方向性をきちんと持っていることは大切です。

開幕直前

7月24日の開幕に向けて、いよいよ6月下旬あたりから

実際我々が投稿作業を行うようになりました。

過去大会を振り返る短編動画が大量に用意されており、それらのアセットを使いながら、大会の機運を高めていきました。

同時に、出場する日本選手団のSNSアカウントをリスト化(気が遠くなるような作業量です…)。

こうして日本人選手たちが発信している内容を見える化することで、大会が彼らの声を拡散することができます。

アスリートの姿勢や声を届けることは非常に重要なミッションでした。

いざ開幕!

7月24日に開幕した東京オリンピック。

開幕してからは、面白いようにフォロワーが増えていきました。

2019年のラグビーワールドカップでも経験しましたが、日本におけるスポーツイベントは、開幕しないと盛り上がりません。

開幕前になかなか盛り上がらないからといって、

一喜一憂すべきではないのです。

開会式を皮切りに、我々日本人チーム4人がシフトを組み、IOCの日本担当2名と合わせた合計6名が本格稼働。

その日の出来事や競技の速報、会場からほぼリアルタイムで届く競技写真、グローバルチームから共有される情報などをもとに、日本語Twitter, Instagramのコンテンツを作り更新していきます。

並行してソーシャルリスニング、モニタリングも行っていきました。

メダル獲得を表現するグラフィックをすぐに制作できるツールもうまく活用。

これが非常に効果的でした。

そして閉幕…

大会は8月11日に閉会式を迎えましたが

その後も3週間ほど業務が続きました。

大会を振り返るコンテンツを配信するためです。

私はこれを「余韻コンテンツ」と呼んでいます。

大会中は次から次へとたくさんの選手たちが活躍しますから

記憶がどんどん上書きされてしまいます。

大会中に起こった盛り上がりをもう一度思い出してもらい、改めて脳裏に刻んでもらうため

メダル獲得の瞬間や、印象的だったシーンを中心に投稿を行っていきました。

まとめ

今回は約3ヶ月間の短いプロジェクトでしたが

間違いなく自分にとって素晴らしい経験となりました。

まずは自分の経歴やスキルをLinkedinなどのツールを通じて公開していたことが全ての始まりでした。

また、どんなチャンスが転がり込んできても対応できるよう

稼働に少し余裕を持たせていたこと。

日々の業務でいっぱいいっぱいになっていたら、こうした新規案件は断っていたかもしれません。

また、このプロジェクトの最中は自分の結婚式の挙式・披露宴の開催が重なりました…笑

そうした状況でも「やってみなよ!」と背中を教えくれた妻にも感謝です。

この経験を、また様々な案件に展開していければと思っています。

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